「渋さ知らズ」はジャンルを横断して活躍してきた、と言われることが多い。創設当初アングラ劇団の劇伴からスタートしたこの楽団は、ある時は海外の有名ジャズフェスを転戦し、またある時はロックフェスのメインステージを異常な盛り上がりとともに務め上げ、また最近ではバラエティに富んだ歌謡曲のカバーアルバムを制作するなど、カテゴリーにとらわれない行動範囲の広さとフットワークの軽さが持ち味だ。
私が「渋さ知らズ」に初めて出会ったのは、13年前のちょうど同じ10月の体育の日の連休だった。当時大学1年生でジャズを演奏するサークルに所属していた私は、先輩方と一緒に「横濱ジャズプロムナード」という街をあげてやっているジャズイベントに来ており、とくに予備知識もなくそれこそなんとなく見てみよう、なくらいの気持ちで「渋さ知らズ」を見ることにしたのだが、今振り返ってもそこでの出会いは確実に私の音楽人生にインパクトを与えた大事件だった。
まず、その見かけに度肝を抜かれた。総勢2、30人はいるんじゃないかという楽器を持った奏者に加えて、全裸もしくは法被に褌姿のダンサー達。確実に自分が今学んでいる「ジャズ」からはかけ離れていた。演奏もとんでもないものだった。凄まじいユニゾンの音圧と圧倒的なテクニックを誇るソリストらによるソロパート、そして空を浮遊するドラゴン。演出の訳の分からなさとこんなヤバい人たちがいるのか!という衝撃で、終わるころには私はすっかりその演奏の虜となっていた。
それ以来、私はファンとなり、CDを購入したり当時普及しつつあったインターネットで情報を集めたりして、その過激なパフォーマンスを支える思想と、個性豊かなプレーヤーの皆さんについて、深く知ることとなる。横浜の夜、「渋さ知らズ」のやっていることって、「ジャズ」というよりは「ロック」だなぁ、という印象を持ったのだが、事実私が次に「渋さ知らズ」を見たのは翌年の夏の「フジ“ロック”フェスティバル」であり、そうそうたる外タレに混じって大ステージの一見客を強烈に引き込んでいた姿は今でも頭に焼き付いている。みんなが足を止めて、ステージに見入っていた。彼らの音楽にジャンルなんて関係ない。苗場でも、メールスでも、野音でも、そしてピットインでも、私たちはただそのグルーヴを感じて踊れば良いのだ。
すでに当時からそうであったように、「渋さ知らズ」のジャンルレスなところは彼らのDNAの中に組み込まれているようなものではあるのだが、唯一彼らがジャンルに押し込まれるところがあるとするならば、CDショップでの売場での位置、だ。出演するのがジャズ系のハコが多いことからか、もう何年も「渋さ知らズ」のCDはショップのジャズコーナーに置かれている。CDショップのジャズのフロアはいつも人が少ない。通販や配信が充実してきている世の中ではあるが、日本ではまだまだCDショップは音楽ファンにとっての大きな情報源だ。ジャズのフロアにはほぼ決まった層の人しか立ち寄らないため、もっと売場を人目につくところに変えてもらえないかなと、いちファンとして思うことがある。
だが、こうした状況の中でも「渋さ知らズ」が今も続いているのは、枠にとらわれることなくその活動の幅を自由に広げ、自ら異種格闘技戦を繰り広げてきた結果によるものなのだろう。世の中の流れに伴って音楽のあり方自体が変わってく中においても、その圧倒的かつ中毒性のあるパフォーマンスをもって、初めて見た人間を一発で虜にして、さらに繰り返し見た人間を熱狂的ファンにさせるなど、多くのリスナーを獲得してきた結果が、今日の25周年に繋がっているのだと思う。
ありがたいことに「岩下の新生姜」は、ダンドリストの不破さんをはじめ、普段から多くのメンバーに食べていただいている。偶然にも両者の歴史は近しく、この度25周年を迎える「渋さ知らズ」に対して、「岩下の新生姜」は今年で発売27年目と、ほぼ同じ年数を重ねてきた。ご縁があって今回の『大作戦 晴海編』での協賛が実現したわけだが、今回このイベントに協賛をしたことの根底には、彼らがこの長い年月バンドを続けてきた姿勢に対するリスペクトがある。
実は、私たちの商品が属している漬物の市場は、音楽の市場同様にここ数年縮小を続けており厳しい状況におかれている。そんな中にあって「岩下の新生姜」は、たくさんのお客様に愛していただいている。食事に添える漬物としてだけではなく、ある時はおつまみとして、またある時はおかずとして、或いは料理素材として、ファンの皆様には本当に自由な使い方をしていただいている。このまま漬物の市場に留まらずに、「岩下の新生姜」の新しい価値をファンの皆様にお届けできたら…。いつもそう思っているが、まだ私たちは力不足で、漬物の枠から飛び出すことができていない。日々試行錯誤を続けている状況だ。
ファンにとっても、送り手にとっても、それらがどんなジャンルに属しているか、は大して重要なことではなく、今付いている冠は昔の誰かが後付けした枠に振り分けた、ただの「記号」でしかない。でも、その枠にまだとらわれてしまっている私たちは、「渋さ知らズ」のその大らかな、何事をも飲み込むかのような姿勢を、本当にうらやましく思っている。ほぼ同じ年月を重ねながら、「渋さ知らズ」は「岩下の新生姜」のずっと先を行っている。大所帯にもかかわらず、数多くのライブに出演し、いくつもの驚きを人々の心に刻むその音楽は、留まるところを知らない。ジャンルなんて関係なく、いつも「渋さ」は「渋さ」なのだ。
だから、「岩下の新生姜」は、『大作戦 晴海編』にただ協賛するのではない。これは、混迷する時代の中で、「渋さ知らズ」のブレない姿勢に対しての共鳴とともに、食品業界の中で多くのユーザーに愛される「岩下の新生姜」を守り続けて、そして「漬物」の外へと発展させていくという岩下食品からの意思表示でもあるのだ。漬物の売場にも、ジャズの棚にも、留まることなく世の中に美味しさと喜びを発信し続けることが、それぞれの存在意義なのだと私は思う。
「渋さ知らズ」といえば、多様なゲストとの競演しばしば話題になるが、例えばSwallowtail Butterfly~あいのうた~をライブで演奏し、さらにCharaがボーカルをとる、なんてことが起こるなんて、10年前の私には思いもつかなかった。でもだからこそ、そのニュースに驚いて、鳥肌が立つような喜びを感じたものだ。意外性を伴った進展は、いつも観る側に驚きを越えた喜びを与えるものだと思う。岩下食品も、「渋さ知らズ」のようにジャンルや固定概念にとらわれることなく、ファンに驚きや喜びを提供する企業であり続けたいと思っている。
今回は、「渋さ知らズ」の他にも多くの優れた音楽家に集まっていただいた。
渋谷毅さんは、多忙なスケジュールにもかかわらず、合間を縫って参加してくださることになりました。社長の岩下和了が、自分にとっての「生きがい」としてこよなく愛するピアノを、晴海のステージでソロでご披露いただきます。
Orquesta Libre(ゲスト:柳原陽一郎)は、「さまざまなジャンルのスタンダード・ナンバーを片っ端からやってみる」をコンセプトに、日本を代表するドラマー芳垣安洋さん率いる中編成バンド。男性シンガーをゲストヴォーカルに迎えたCD・そしてOtotoyでの配信曲は出色の出来で、素晴らしいスタンダードのメロディを通して、歌の本質が心に響いてくる、しみじみと、そしてゆったりと聞ける音楽を奏でています。かつて“たま”で一世を風靡した柳原陽一郎さんのヴォーカルとともにお楽しみください。
栗コーダーカルテットは、学校教育が終われば見向きもされなくなるリコーダーに光を当て、独自のフィルターを通した楽曲でもってその存在にポピュラリティを与えたグループです。通称「やる気のないダースベイダーのテーマ」で脱力系として一躍注目を浴びた彼らの楽曲は、NHK 「ピタゴラスイッチ」やアニメ「つり球」のテーマ曲など、生活のどこかで耳にしている率が異常に高い、クリエイターライクなバンドでもあります。今回はレギュラーメンバーの関島さんが欠席した「3/4」にビューティフルハミングバードのおふたりを迎えてのご出演となり、この組み合わせを楽しめるのは10~13日の4日間のみだそうで、想像だけで相性の良さがわかってしまうほどですが、でもやはり晴海の会場でライブで聴いていただきたいです。
スガダイローさんは、超絶技巧と圧倒的なスピード感のある表現力を素に活躍する注目の若手フリージャズピアニストです。2011年にリリースした様々なジャンルのアーティストとの即興ライブを記録した『八番勝負』、そして翌2012年リリースのヒップホップユニット降神のMC志人と共作した『詩種』の2作では、従来の日本のフリージャズの枠からはみ出た、本当に聞いていてワクワクする、スリリングな音を届けてくださっていて、私も大好きな作品です。今回は活動のベースでもあるトリオでの参戦となります。
どのアーティストも「渋さ知らズ」に過去に参加経験があったり、または現在もメンバーであるなど、「渋さ知らズ」との関係が深く、かつ他に類をみない無比な面々が集まってくださることになりました。ぜひ一日ゆっくりと時間をかけて、このお祭りをお楽しみください。
岩下食品株式会社
渋さと一緒に仕事ができて光栄な一社員
企画開発部 小坂尚弘
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